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第一章 過去と現在が交差する47

last update 最終更新日: 2025-01-15 19:55:28

その日の真夜中。

突然鍵が開いて入ってきたのは、髪の毛の長い女の人……じゃなくて、大くん! バレないように女装してきてくれたのだ。

「美羽、どうしても会いたくて女装してきた」

ギュッと抱きしめてくれる。

「大くんっ」

彼の長い腕に抱きしめられると安心して体の力が抜けるような感じがした。

「一人で不安だっただろ。ごめん。俺が美羽と、子供を守るから」

「うん……。でも本当にいいのかな……」

「芸能界にはいられないかもしれないけど、苦労させるかもしれないけど」

「いいの。一緒にいてくれればいい」

お互いに涙を流し合う。

なにもなくていい。苦労してもいいから、どうか一緒にいさせて。祈るような気持ちだった。

お腹に手を当てた大くん。

「元気で生まれてくるんだぞ」

優しいパパの顔で、私までもが和んだ。

「……芸能界の仕事を途中で諦めてしまうのは心苦しいことなんじゃないのかな?」

「そうだけどね……。社長は絶対に許してくれないと思う。俺の中ではメンバーも事務所もものすごく大事なものだけど、でもすべてを選べないとしたらやっぱり大切なのは美羽だ」

「……」

納得できるものではない。

「難しい顔をしないでくれ」

「……うん」

話し合いを重ねてもその日は結論を出すことができなかった。

「まずはご両親に妊娠しているということを伝えるべきだ。俺も近いうちに挨拶に行かせてもらう」

「わかった」

「必ず俺と一緒に行こう」

布団の上で抱き合って眠る。

大好きな人の呼吸を感じながら、眠る幸せは、何にも変えられない。

大くんは、太陽が昇る前に帰ってしまった。仕方がないことなのだけど、ちょっぴり切ない。

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    「妹が置いていった服ならあるけど。サイズ合うかな」「勝手に借りていいのかな?」「心配なら聞いてやるか」スマホで電話をはじめる。「あ、舞? 久実に服貸していい?」『えー! 家にいるの? 泊まったってことは、えーなに? 付き合ってるとか~?』ボリュームが大きくて話している内容が聞こえてしまう。「付き合ってくれないけど、まぁ……お友達以上だよ。じゃあな」お友達以上だなんて、わざとらしい口調で言った赤坂さんは、得意げな顔をしている。「……じゃあ、お借りするね」黒のニットワンピース。着てみるとスカートが短めだった。ひざ上丈はあまり着たことがないから恥ずかしい……。着替えている様子をソファーに座って見ている。「見ないで」「部屋、狭いから仕方がないだろう」「芸能人でお金もあるんだから引っ越ししたらいいじゃない」「結婚する時……だな」その言葉にドキッとしたが、平然を装った。私と……ということじゃない。一般的なことを言っているのだ。メイクを済ませると赤坂さんは立ち上がって近づいてくる。見下ろされると顔が熱くなった。「可愛い。またやりたくなる……」両頬を押さえつけたと思ったら、キスをされる。吸いつかれるような激しさ。顔が離れる。赤坂さんの唇に色がうつってしまった。「久実……愛してる」……ついつい私もって言いそうになった。「せっかく 口紅塗ったのに汚れちゃったじゃないですか」 私はティッシュで彼の唇を拭った。 すると 私の手首をつかんで動きを止めてまた さらに深くキスをしてきた。「……ちょっ……んっ」「久実、好きって言えよ」「……時間だから行かなきゃ」

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』78

    久実sideふんわりとした意識の中、目を覚ますとまだ朝方だった。今日は休みだからゆっくり眠っていたい。布団が気持ちよくてまどろんでいると、肌寒い気がした。裸のままで眠っている!そうだった……。また、赤坂さんに抱かれてしまったのだ。逃げればいいのに……逃げられなかった。私の中で赤坂さんを消そうと何度も思ったけど、そんなこと無理なのかもしれない。すやすや眠っている赤坂さんを見届けて、ベッドから抜けようとするとギュッとつかまれた。「どこ行くつもりだ」「帰る」「………もう少しだけ。いいだろ」あまりにも切ない声で言うから、抵抗できずに黙ってしまう。強引なことを言ったり、無理矢理色々したりするのに、どうして私は赤坂さんのことがこんなにも好きなのだろう……。もう少しだけ、赤坂さんの腕の中に黙って過ごすことにした。太陽がすっかり昇り切った頃、ふたたび目が覚めた。隣に赤坂さんはいない。どこに行ってしまったのだろう。自分のスマホを見るとお母さんから着信が入っていた。「……ああ、心配させちゃった……」メールを打つ。『友達と呑みに行くことになって、そのまま泊まっちゃった』メッセージを送っておいた。家に帰ったら何を言われるだろう……。恐ろしい。「おう、起きてたのか」赤坂さんはシャワーを浴びていたらしい。上半身裸でタオルを首にかけたスタイルでこちらに向かってきた。あれ……昨日は一人じゃ入れないって言ってたのに。なんだ、一人で入れるじゃない。強引というか、甘え上手というのか。私はついつい赤坂さんに流されてしまう。そんな赤坂さんのことが好きなのだけど、このままじゃいけないと反省した。「今日、休みだろ?」「……うん」「じゃあ、大樹の家行こう」「は?」唐突すぎる提案に驚いてしまう。「暇だったらおいでって連絡来たんだ。美羽ちゃんも久実に会いたがってるようだぞ」美羽さんの名前を出されたら断りづらくなる。優しい顔でおいでと言ってくれたからだ。「でも……服とかそのままだし……」「そこら辺で買ってくればいいだろ」「そんな無駄遣いだよ」まだベッドの上にいる私の隣に腰をかけた。そして自然と肩に手を回してくる。「ちょっと……近づかないで」「なんで?」答えに困ってうつむくと赤坂さんは立ち上がってタンスを開けた。

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